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2013年8月17日 (土)

反TPP勢力 結集急げ 大学教員の会・弁護士ネット座談会(2013/8/16)(「日本農業新聞」e農ネットより)

http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=22811&utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter
「日本農業新聞」から
 日本政府は7月23日に環太平洋連携協定(TPP)交渉に参加した。22日に始まるブルネイでの交渉会合では、関税撤廃などをめぐる自由化交渉が本格化。年内妥結に向けた交渉加速化のために閣僚会合も開く。事態が急迫する中で、日本農業新聞は「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」の呼び掛け人・醍醐聰東京大学名誉教授、「TPPに反対する弁護士ネットワーク」の岩月浩二共同代表と中野和子事務局長に、各地の団体やグループ、個人の反TPPの運動を全国的なうねりへとどう高めていくか――などについて話し合ってもらった。
[出席者]
大学教員の会呼び掛け人=醍醐 聰氏
弁護士ネット事務局長=中野和子氏
弁護士ネット共同代表=岩月浩二氏
司会=内田英憲日本農業新聞農政経済部長

社会への影響
怖い「命も金次第」=醍醐氏
/ 多国籍企業を優先=岩月氏/ 食の安全が守れぬ=中野氏

 司会 TPPは関税の撤廃に加えて大幅な規制の改廃を目指しています。また投資家・国家訴訟(ISD)条項を通じて投資家や企業が国と対等な立場に立つことになります。こうしたことなどから日本農業新聞は、従来の自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)とは異なり、農業だけでなく国民の暮らしを破壊し国の主権をも脅かす「異常協定」と位置付けています。TPPのどこが問題だと考えていますか。

 醍醐氏 私は大学で会計学を専攻してきた。ここ数年、製薬産業の経営を分析するうちに薬の値段が高く、製薬会社の一人勝ちが目立っていることに気付いた。一方、厚生労働省は高い薬価を引き下げ、保険財政の立て直しを図ろうとしている。その決め手となるのが、先発メーカーの特許権切れに伴う安価な後発医薬品「ジェネリック医薬品」だ。現在、ジェネリックの普及率は数量ベースで米国が72%、ドイツが63%なのに対して日本は24%。世界の最低水準だ。

 TPP交渉の中で米国が薬の特許期間延長を主張しているとの一部報道に接し、危機を感じるようになった。効能の変わらない安価な医薬品で助かる命があるのに、それが助からなくなる。人の命も金次第という、内外の製薬資本の強欲をまかり通らせてはならないとの思いに駆られた。
 「大学教員の会」は情報を正確に分析し、国のさまざまな分野に影響が及ぶということを、分かりやすく具体的に発信していきたい。

1n1_5  岩月氏 多国籍企業に生活を破壊されるという脅威を感じている。貿易の妨げになる各国の規制やルールは全て邪魔だとされることに問題がある。米国が狙っているのは世界第3位を誇る日本の市場であることは間違いない。

 特にISD条項は多国籍企業のための仕組みづくりであり、日本の主権が奪われかねない。政府は過去のFTA・EPA、投資協定などにも入っているというが、日本が締結した協定は、相手が先進国であるケースはほとんどない。途上国の企業が日本に投資し、その投資により期待された利益が上がらないから日本政府を訴えるということはまず考えられない。しかし(米国が相手となる)今度は、覚悟して考えなければいけない。

 北米自由貿易協定(NAFTA)では45件の訴訟のうち30件近くが米国からの訴えだ。米国では弁護士が一大産業。資金力や攻撃性も桁違いで、日本人的な感覚では想像できないほどしたたかだ。米韓FTAの締結時、韓国では法務省さえISD条項に危機感を持った。韓国はISD条項付きの協定を80ほど結んできたが、訴えられることはなかった。しかし米国が相手でも、そのまま(以前と同様に訴えられない)とは考えなかった。
 交渉参加の決定に限らず、日本では国民による意思決定ができなかったことにも危機感を感じている、当事者である国民が決めるべきことを決めさせない。TPPがいかに民主主義を破壊するかを感じる。

 中野氏 食の安全や農業に対するTPPの影響は消費者として見過ごせない。生協組合員である私も含め、「国産の安全なものを食べたい」というのが多くの国民の願いだと思う。例えば、(残留農薬や食品添加物の基準など)食品の国際規格を定めるコーデックス委員会よりも日本は厳しい基準を設けている。TPP参加に伴って自主的な規制が許されなくなるという問題意識も必要だ。
 また予防原則にのっとって遺伝子組み換え(GM)食品に「ノー」といえることも国家主権だ。残留農薬や食品添加物の基準も含め、(緩和や改廃を求める)米国の主張が通るようでは消費者の選択の自由が奪われてしまう。生産者と消費者が信頼関係の上で育んできた日本の文化や営みが否定されかねない。

組織化の意義
ISD危険性発信=岩月氏
/ 撤退への合意醸成=中野氏/ 正確な「影響」試算=醍醐氏

 司会 TPP反対の立場からそれぞれ政府への要望書を作成し、賛同者を募る形で組織を立ち上げたわけですが、目的はなんですか。

 醍醐氏 私たち「大学教員の会」は3月28日のTPP交渉からの即時脱退を求める、安倍晋三首相宛て要望書について賛同の署名集めを始めたのがスタートだ。現在、賛同する大学教員は890人に上る。
 影響試算も3度出した。政府との違いは、関税撤廃に伴う生産額への影響を、農林水産業だけでなく関連産業についても算定した点だ。試算では農林水産物で3兆円の損失が生じ、関連産業を含めた生産の落ち込みを11.  7兆円と見込んだ。農林水産業で生産が落ちれば、関連産業ではその3倍のマイナス効果が生じる。

 また政府試算は雇用に言及していない。むしろ安い輸入品が入ってきて消費が伸び、所得増や雇用が伸びることを想定している。われわれの試算では全産業ベースで190万人、農業は147万人の雇用が失われる。農業では規模を拡大して乗り切ろうというムードが広がっているが、稲や畑作、酪農の3分野の試算では、関税が撤廃されれば補助金がない場合は大規模農家も赤字になる。TPPの前には“規模の神話”も成り立たない。

 岩月氏 「弁護士ネット」は米韓FTAや北米自由貿易協(NAFTA)を踏まえISD条項の危険性を分析する。TPP交渉全体の調査や検討、評価も行う。国民の生命や健康を守る国内法の仕組みが改廃される危険性や、国家主権の侵害や憲法に抵触するとの懸念についても情報を発信したい。TPPに反対する市民や業界団体の活動を各地の弁護士が法律の面から支えながら、交渉からの撤退や情報開示を政府に働き掛けたい。

 中野氏 一部の投資家や企業、少人数の利益のために行われているTPP交渉の本質を明らかにし、不利益を被る大多数の国民に伝えることが「弁護士ネット」の目的だ。「(交渉から)撤退すべきであるという」国民的な合意を醸成したい。

 国内にはさまざまな反TPP運動が起きているが、何となくばらばらな印象を受ける。われわれも弁護士だけのネットワークにとどまらず、国民各層との多様な連携を目指したい。経済的な側面はもちろん、人権や憲法の問題も共有することで連携を広げ国民運動につなかれば、と考えている。
 各国の特定非営利活動法人(NPO法人)や非政府組織(NGO)などと連携していくことも重要だ。他の国も豊かになって平和を維持していくことが日本国憲法の立場。法の精神を生かすならTPPに反対するしかない、ということで運動を進めていきたい。

 岩月氏 弁護士ネットの発足に当たり、仲間の弁護士同士で非常に積極的で切実な問題意識を交わし、「集まることが大事だ」と実感した。また、弁護士に期待される役割も多いこともあらためて教えてもらった。

今後の展開
戦う手段いくつも=中野氏/ 世論の喚起が急務=岩月氏/ 守秘義務の壁崩す=醍醐氏

 司会 多くの反対の声を無視して日本政府は7月23日にTPP交渉に正式に参加しました。どう捉えていますか。

 醍醐氏 7月のマレーシア交渉会合時に日本政府が正式に参加し、守秘義務契約を結んだことで情報公開に大きな壁が生じている。この問題にどう挑んでいくのかが焦点となる。他の交渉参加国はおろか、日本が何を主張したかも分からないような交渉を続けることは極めて危険だ。
 8月22日からブルネイで開かれる次回交渉会合では、品目ごとの関税撤廃・削減に絡めた議論が交わされると聞いている。日本政府として正念場を迎える。それに先立ち大学教員の会として安倍晋三首相と衆参両院の農林水産委員会宛てに申し入れをし、20日に記者会見で発表することにしている。

 岩月氏 懸念事項が次々と明るみになる半面、TPPのメリットは漠然としたイメージしかなく、具体的にほとんど語られていない。安倍政権の経済対策「アベノミクス」と同様、何となく「経済が良くなるんだろう」という国民が多いのが現状だ。日本では自由貿易を無条件に良しとする議論がある。しかし米国は自由貿易のために国内制度を犠牲にするつもりはなく、国益と国民の利益を守るために徹底した保護主義を貫く。
 「TPPは憲法をつぶしていくという問題である」ということは弁護士にさえ知られていない。日本にとっては国際条約が国内法を凌駕(りょうが)する恐れもある。こうした実態を伝え国民世論を喚起することで、TPP推進の圧力を乗り越えられる可能性がある。

 中野氏 もともとマレーシア会合での日本政府の目的は、交渉内容を記した膨大なテキスト(協定案文)の入手と翻訳だ。交渉までたどり着いていない。今後の推移について弁護士会の仲裁の専門家は「日本政府の交渉次第だ」と言うが、交渉の余地はどこまであるのか分からない。交渉からの撤退、批准阻止、憲法訴訟など戦う手段はいくつもあり、戦いは決して短くない。機を得た戦略が必要だ。それだけに、できるだけ急速に交渉の内容を見ていきたい。今は海外の情報も入手できる時代。アンテナを張り流布されている情報を見極めながら、国内に紹介することも重要だ。

 岩月氏 反TPP運動と並行し、国際的な貿易の在り方として何がベストか考え直すことも必要だ。国ごとに得意分野を交渉のテーブルに乗せ、貿易を拡大することによって互いに国を繁栄させる方向が望ましい。TPPのような侵奪の仕組みが将来的にメリットがあるのか、国民を巻き込んだ議論を喚起すべきだ。

取り組みの鍵
身近に危機意識を=醍醐氏/ 有権者を主人公に=中野氏/ うねりを地方から=岩月氏

 司会 交渉参加を受けて本紙は、衆参両院の農林水産委員会の決議や自民党の決議をそのまま交渉方針にするよう主張しています。決議の内容が全てTPPに反映できれば、「異常協定」ではなくなり一般的なFTA・EPAと同じになるからであり、また、決議に従えば、農林水産物の重要5品目などを関税撤廃の例外にできなければ交渉からの「脱退」ということになるからです。
 それには政府に決議を守らせるための圧力が必要です。反TPPの世論が各地で高まり、最終的には、協定を承認するかどうかを国会で判断する国会議員が、決議から後退するような妥協を認めないようにすることが重要だと考えています。各地域での取り組みを含めて、反TPPの国民的な運動に向けてどのような展望を持っていますか。

 醍醐氏 われわれが手掛けた都道府県ごとの影響試算が徐々に浸透してきている。地方のマスコミが取り上げたことで、それが「火付け役」となり自治体の関係者からの問い合わせも増えた。TPPの影響をもっと身近に感じてもらえるようにするには、地域ごとにより詳細な試算も求められるだろう。例えば、北海道では、オホーツク地区など地域ごとに試算を出そうとしている。
 今後の運動の強化では、地域からの働き掛けが極めて重要だ。当会には地方の大学教員も多数賛同している。全国組織の強みを生かし、影響試算で自治体の要望に応える動きにも期待したい。また、9月中旬には東京で弁護士ネット、主婦連、大学教員の会の3者が呼び掛け団体となってシンポジウムを開く。国民的規模の運動に高めるきっかけにしたい。

 中野氏 同感だ。地方の弁護士会と各自治体の取り組みが問われる時期に来ている。TPPの影響は、地域の基幹産業である農林水産業だけでなく、地域経済全体の疲弊につながる。弁護士会からも講師を派遣し、農業者や商工会、労働組合、建設業者などに危機感を共有してもらう活動が必要だと思っている。そのために弁護士もTPPをより深く知っておかなければならない。

 岩月氏 顧問弁護士になっているなど弁護士と自治体との接点はたくさんある。こうした関係が地方での反TPP活動に有効に働くだろう。普通の弁護士なら、TPPの本質やその異常性が分かるはずだ。「百害あって一利なし」の声を地方から上げてもらい、全国的なうねりを形成していくべきだ。

 醍醐氏 先ほどの話のように、衆参農水委の決議を盾にTPP交渉を行き詰まらせることもできる。決議では重要5品目などを「聖域」と位置付け、10年を超える段階的な関税撤廃も含め認めないとしている。農業にとどまらずISD条項、食品添加物にも言及した包括的な内容であることにも注目すべきだ。また自民党のTPP対策委員会の3月の決議では国民皆保険制度なども「聖域」と位置付け、農水委の決議と同様に確保できない場合は「脱退も辞さない」としている。
 国民的な決議の周知と並行し、農林議員の動向も注視していきたい。大学教員の会は、19日に
森山裕(衆)、野村哲郎(参)両農水委員長と面会して、決議の厳守を求める要望書を提出することにしている。また、反TPPを掲げて当選した自民党の農林議員らが決議の重みを背負い、どう履行するのか、われわれはしっかりと監視していく。

 中野氏 自民党の農林議員も政府の判断と地元有権者とのはざまで苦しんでいる。国政に送り出した議員が「(政府は)いけないことをやっている」と認識し、国会論戦や党内議論でしっかりと主張してもらうことが大事だ。地方の有権者こそ、この運動の主人公だ。

[キーワード]
・投資家・国家訴訟 (ISD)条項  
 進出先の国の制度や規制で不利益を受けたとして投資家や企業が、その国の政府や地方自治体を訴えることができることを定めたもの。裁判は進出した国ではなく、世界銀行傘下の国際仲裁機関「投資紛争解決国際センター」で行う。
 日本政府の資料によると、北米自由貿易協定(NAFTA)では、米国の投資家・企業がカナダとメキシコの政府に対して起こした計29件の訴訟の状況は、米国の7勝11敗で、他に和解3件、仲裁不成立・取り下げなど6件、係争中2件。米国政府が訴えられた15件では米国の敗訴はゼロで、投資家・企業の敗訴7件、仲裁不成立・取り下げなど5件、係争中3件で、米国は無敗だ。
 国連貿易開発会議(UNCATD)の5月のまとめでは、2012年に世界で新たに起こった訴訟は58件で、年間件数は2年連続で過去最高を更新。TPP交渉参加国では米国の投資家・企業が4件と最も多い。

・米韓自由貿易協定(FTA) 

 米国と韓国が2007年4月に締結し、12年3月に発効したFTA。関税撤廃と大幅な規制緩和を同時に進めるため、「ミニTPP」とも呼ばれている。米通商代表部(USTR)高官から「TPPの自由化水準は米韓FTAを参考にする」との発言もあった。
 米韓FTAで韓国は、牛肉・豚肉をはじめとして、米を除くほとんどの農産物の関税を即時まはた段階的に撤廃。医薬品価格の上昇をもたらす可能性のある制度や経済自由特区での営利病院の運営、韓国郵政のサービスの制限、米国で安全検査を通過した遺伝子組み換え(GM)作物の輸入を韓国が事実上承認する仕組み、ISD条項や一度規制を緩和したら元に戻せない「ラチェット条項」といった「毒素条項」などを受け入れた。
 韓国政府は既に、ISD条項に基づく訴訟を米国の企業から起こされており、また訴訟を恐れて自動車の環境規制の実施を延期した事例もある。

[ISD危惧] ISD危惧TPPに反対する弁護士ネットワーク
 全国318人の弁護士が7月29日に設立。TPP交渉から撤退するよう求める要望書を同日、安倍首相に提出した。
 特に問題視しているのがISD条項だ。国の主権を侵害し憲法にも抵触する恐れなどについて情報を発信。また各地の弁護士が、市民や業界団体の反TPPの活動を法律の面から支える。勉強会も開き世論づくりを目指す。交渉からの撤退や情報公開を求めて政府や国会議員にも働き掛ける。
 弁護士ネットは愛知県弁護士会の川口創弁護士が提案し、共同代表に日本弁護士連合会前会長の宇都宮健児弁護士、愛知県弁護士会の岩月浩二弁護士、栃木県弁護士会の伊澤正之弁護士が就任。
2013/07/29 「TPPの『ISD条項』は国家主権の侵害につながる」有志の弁護士318名が政府に撤退を求める要望書を提出 ~TPPに反対する弁護士ネットワーク設立記者会見

[農林水産・関連産業 11.7兆円減]
 「大学教員の会」が7月発表したTPP参加の影響試算では、農林水産物の関税を撤廃した場合、関連産業(経済波及効果分)を含めて生産額が11.7兆円減少すると予測した。これに伴い農家や企業、従業員らの事業所得と家計所得は総額で4.3兆円減少すると試算。安い輸入品の出回りで消費者の家計負担は2.5兆円低下するが、差し引きで所得が1.8兆円減るとの見通しを示した。所得は39都道府県で減ると見込む。
2n1  試算では、関税撤廃による農林水産物の減少額は政府統一試算を基本に3.1兆円と算定。道府県が独自に試算している場合はそれを優先した。日米事前協議の結果、米国が日本製自動車に課す関税の撤廃までの猶予期間が長期になると見込まれるとして輸出拡大の効果は織り込まなかった。
 東京都や兵庫県、愛知県といった都市部は食品や肥料、農薬など関連産業が多いためマイナスの影響が大きくなった。

 農業の主な経営形態別の影響も試算した。稲作では、米、小麦・大麦、小豆などの豆類、でんぷん原料作物などの芋類の4品目に影響が出るとして算定。10ヘクタール以上の大規模層を含めた全ての層の農家で、補助金を除いた所得が赤字になった。
 また北海道の酪農も、搾乳牛100頭以上の大規模層を含む全ての層で、補助金を除いて赤字になる試算。畑作も、北海道・都府県ともに大きな減収が避けられないとの結果になった。

[約900人賛同TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会]
 東京大学の醍醐聰名誉教授の発案で、全国の大学教員が連帯してTPPの広範な危険性を国民に情報発信するために3月に発足。17人が呼び掛け人となって賛同者を集め、交渉参加表明の撤回と事前交渉の中止を求める要望書を4月9日に安倍晋三首相に提出した。
 呼び掛け人は醍醐氏の他、大西広慶応義塾大学教授、金子勝慶応義塾大学教授、鈴木宣弘東京大学大学院教授、岡田知弘京都大学教授ら。賛同者は現在900人に上り、文系・理系を問わず多様な分野の研究者が結集している。TPPの影響試算や、TPP交渉参加に向けた日米事前協議の問題点の分析結果などを発表し、世論の喚起につなげている。

[弁護士ネット要望書]
 第1 徹底した情報の公開を求める
 TPP交渉は21分野にわたって行われている。食の安全や環境・労働を含む国民の生活に大きな影響を及ぼす広汎な分野が交渉の対象となっており、しかも、自由化の対象とされた分野では、全加盟国の同意をもって例外と認められない限り、統一的な規制に服する、いわゆるネガティブリスト方式が採用されていることから、広汎な制度がTPPによって改廃を求められることになる。
 TPPは、国民の生命・健康・財産を保護するために行う国家の規制などについても幅広く改廃を迫るものとなる危険がある。国民生活に重大な影響及ぼす事項については、国民的議論を尽くし、国民の理解と同意を得て進めることは民主主義国家のあり方として当然である。
 よって、政府に対して、TPP交渉に関して取得し得た全ての情報を国民に公開するように求める。

 第2 ISD条項を前提とするTPP交渉からの即時撤退を求める
 日本国憲法76条1項は、「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する」と規定する。他方、ISD条項は、外国投資家に対して、投資受入国政府との間の具体的な法的紛争を国際仲裁に付託する権利を認める。このような紛争が我が国裁判所の管轄に属することは明らかであるから、ISD条項は、同項の例外をなすことになる。
 政府は、TPP参加問題が浮上するまで、国連自由権規約の選択議定書が定める個人通報制度には「司法の独立」を規定する憲法76条3項との関係で問題があるとする見解を挙げて、選択議定書の締結を見送ってきた経緯がある。個人通報制度よりいっそう包括的で強力な例外を認めるISD条項には、憲法76条1項の規定との関係上、問題が生じることは、従前の政府の立場でも明らかである。よって、ISD条項は憲法76条1項に違反する。

 2011年には、ドイツ政府に対して、スウェーデンの電力会社が脱原発政策によって38億ドルの損害を被ったとして提訴するなど、国家の中核的な政策決定にまで、ISD提訴が及ぶようになっている。また、韓国は、低炭素車支援制度の実施を予定していたが、米国自動車産業界から米韓FTAに反するとする意見を受けて、同制度の実施を見合わせる結果となっている。一国の基本的な政策決定や立法まで提訴の対象となり、政策決定を阻害しているのである。

 日本国憲法41条は、「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」と定める。ISD条項は、国会の立法裁量すら、投資家国際仲裁のもたらす萎縮効果によって、幅広くこれを阻害するものであり、国民主権原理の端的な表れである同項に違反する疑いがある。
 司法制度が整備された先進国との間、なかんずく訴訟大国と呼ばれる米国との間でのISD条項が、主権を侵害するとする意見が多数、提起されていることには理由がある。
 国家主権の法的形態が憲法である。主権が侵害されることは国内法的には国家の憲法に違反する事態が生じることを意味する。TPPにおけるISD条項は、日本国憲法76条1項に反するとともに、41条に反する疑いが強い。
 ISD条項は、日本国憲法の根本的改変に等しい事態を招く。よって、日本国政府は、ISD条項を前提とするTPP交渉への参加を即時撤回することを強く求める。(要約、7月29日提出)

[大学教員の会要望書]
 自民党は昨年12月の総選挙で(1)聖域なき関税撤廃を前提としない、のほか(2)自動車などの数値目標は受け入れない(3)国民皆保険制度を守る(4)食の安全安心の基準を守る(5)国の主権を損なうISD条項は合意しない(6)政府調達・金融サービスなどは我が国の特性をふまえる、が確保されない限りTPP交渉に参加しないと公約しました。にもかかわらず、安倍首相は2月22日の日米首脳会談で農産物重要品目の保護に何らの担保も得られていないのに(1)が確認されたと強弁し、さらに(2)~(6)は「公約ではない」、「参加の判断基準ではなく参加後の実現目標だ」というレトリックを用いて、3月15日に交渉参加を正式に表明しました。このような公約改ざんがわずか3カ月で行われるのでは、議会制民主主義は成り立ちません。

 また参加表明にあたって「国民に丁寧に情報提供していくことを約束する」「新たなルールづくりをリードしていくことができる」旨強調していますが、いずれも非現実的です。まずTPP交渉が完全に秘密裏に行われ、国民が情報アクセスできないことが交渉国間で確立されたルールとなっています。また昨年カナダとメキシコが参加承諾を受けるにあたって、(ア)すでに既存交渉国で合意された事項は内容すら見ることなしに丸のみする(イ)参加後も交渉事項の追加や削除の権限はない、という念書にサインさせられたことが明らかになっており(ウ)参加後に既存交渉国が合意する内容についても拒否権がないとの指摘すらあることからして、今から日本が参加しても極度に差別的な取り扱いを受けて対等な「ルールづくり」などに加われない、逆にできあがったルールの丸のみになる公算が大です。

 政府はわが国がTPPに参加した場合の日本経済全体の効果はGDPべースでは0.66%(3.2兆円)の増加になるとの「試算」を示しました。しかし農林水産業に及ぼす影響額(マイナス3.0兆円)は、今でも異常に低い日本の食料自給率をさらに押し下げ、農林水産業者の営業と生活はもちろん、関連する地域経済に壊滅的な打撃を与えることを意味します。
 さらにTPPへの参加は、「試算」で全く考慮されていない非関税分野においても重大な脅威をはらんでいます。既存交渉参加国間では既に、食品の原産地表示への自己証明制度の導入、貿易手続の規制緩和、各国法令・国内規制を策定する過程へ外国企業の利害関係者を参加させる内国民待遇の採用、各国の著作権や医薬品・医療技術までを含む特許権の米国水準への強化、そうした協定ルールに抵触したとして外国企業が投資受け入れ国政府を当該国の司法制度を超越して、いわば治外法権的に訴える権利を付与するISD条項の導入などが協議されています。これらの事項は、いずれもわが国の経済自主権、国民の健康などを侵害する恐れをはらむものです。これでは「平成の不平等条約」といっても過言ではありません。こうした事態が見込まれるTPP交渉にわが国が参加するのは、国民不在の「国益」=「日米同盟の絆」の証しにはなっても、守られるべき国民益を毀損(きそん)することは間違いありません。

 以上から、私たちは安倍首相と日本政府に対し、TPP交渉への参加表明を撤回し、事前交渉をすみやかに中止することを要請します。そして、私たちは今後、国民各層、各団体と連帯して、日本政府にTPP交渉から脱退するよう求める運動を続ける意思を共有していることをお伝えします。(全文、4月9日提出)

[プロフィル]
・中野和子(なかの・かずこ)
 1961年、静岡県生まれ。日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長。「TPPに反対する弁護士ネットワーク」事務局長。90年司法試験合格、85年早稲田大学卒業。2010年にシンフォニア法律事務所設立。元第二東京弁護士会副会長。
・醍醐聰(だいご・さとし)
 1946年、兵庫県生まれ。東京大学名誉教授。財務会計論専攻。「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」の組織化を提案した呼び掛け人。89年に東京大学経済学部教授、2010年に同大学名誉教授。著書に『日本の企業会計』『会計学講義』など。
・岩月浩二(いわつき・こうじ)
 1955年、愛知県生まれ。同県弁護士会司法問題対策委員会TPP問題研究会会長。「TPPに反対する弁護士ネットワーク」共同代表。79年司法試験合格、80年東京大学卒業。92年名古屋市に守山法律事務所設立。著書に『TPP黒い条約』(共著)。
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