TPPの狙いは多国籍資本による“世界統合”だ 侵食される権利と自由

TPPの狙いは多国籍資本による“世界統合”だ   侵食される権利と自由
アンドリュー・ギャビン・マーシャル(独立リサーチャー) 翻訳:加治康男
アジア記者クラブ  http://apc.cup.com/
Stopptpparticle1 年の瀬を迎えた日本は総選挙一色となっている。原発稼働の賛否などと並び、乱立したすべての政党が掲げているのが環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加問題である。TPPを舌鋒鋭く批判し続けている筆者は、本稿で①協定に基づく “国際評決機関” が参加国の国内法を骨抜きにする、②製薬業界やIT企業などの利益が偏重され、人権が侵害される、③米国では北米自由貿易協定(NAFTA)の苦い経験からTPP協定への反発が強まり、政府は秘密主義に徹している-とTPPを巡る実態と現状を告発している。協定の狙いは多国籍資本による“世界統合”であり、巨大資本の利益とは無縁な“99%の人々”の権利は確実にさらに侵食される、というのだ。(編集部)
http://apc.cup.com/no245p18-19.pdf
原題:なぜ秘密主義に徹するのか?TTPグローバル企業戦略
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は、歴史上最も秘密主義に徹し、かつ“最も透明性の欠如した”貿易交渉である。

■一部漏えいした機密
幸いなことに、TPP協定によって影響を受ける諸国とその社会には、協定に批判的な公的研究機関やオルタナティブメディア機関が存在する。そして協定の草案の一部が彼らによって明るみに出されてきた。主流の企業メディアがなそうとしない機密の暴露によって、我々はTPP協定が実際に何を目論んでいるかをより深く理解できる。
例えば、公益団体はTPP協定が数百万人の失業者を生み出す恐れがあると警告している。米議会がロン・カーク米通商代表に宛てた書簡によると、協定は多くの分野で将来の議会の立法活動を制約することになる。その分野は労働、特許、著作権、土地使用、食糧、農業と農産物基準、天然資源、環境、専門職の資格供与、国営企業と政府調達政策に加え、財政、医療、エネルギー、情報通信、その他サービス分野の諸規制を包含する。
言い換えれば、TPP協定は、公約された通り、“貿易”の領域をはるかに超えて進んでいる。“企業戦略”をベースとする北米自由協定(NAFTA)と同じように、TPP協定を構成する26の条項中、貿易に関連しているのはわずか2つの条項である。その大半は、とりわけ知的所有権(著作権と特許法)に関連した多数の企業への新たな権利と特権の付与と並び、政府規制の抑制を認めている。

■国内法を骨抜きにする“国際評決機関”
環境問題活動家、財政改革支持者、労働組合が国内法の重要な保護条項が骨抜きになっていることに長期間にわたって反対していた時期に、オバマとカークは登場したが、漏えいした文書によって、オバマ政権は“多国籍企業にさらに強力な政治力を付与しよう”と目論んでいることが明るみに出た。
換言すれば、役に立たなくなり、ほとんど効力を失ってしまった、既存の環境、財政、労働に関連する法律は、オバマ政権と大統領に命令権を付与するTTP協定の締結に賛同する600の企業にとって受け入れられないものである。
協定が締結されれば、米国で事業を営む外国企業は環境、財政、あるいは労働権の保護に関する米国の国内法に拘束されないことになる。外国企業は国内法を覆す権限を付与された“国際評決機関”に訴え、企業の新しい“権利”を侵害したとの理由で米政府に制裁を科すことができようになる。
各国の法律に影響を及ぼすことになる“国際採決機関”では、企業の顧問弁護士が“裁判官”に任命される。したがって、彼らが審理する訴訟では“公正でバランスのとれた”聴聞が実施される。だが、なによりも企業の権利を支持した上で、“公正にバランスをとる”のである。
「シチズン・トレード・ キャンペーン」という名の公益団体連合は、企業が“潜在利益”の障害物である政府を直接訴えることになる“国際評決機関”についての情報を示すTPPの“投資”条項の草案を公にした。「草案は米国内企業や米国市民が所有する権利をはるかに超える特別な権利を多国籍企業に付与することをはっきり提示している。…環境、消費者の安全など公共の利益に関する規制に非常に広範な影響を及ぼしかねない提言は公の審査と論議の対象としなければならない。密室で立案すべきでない」。同連合のアーサー・スタモリス事務局長はこう主張する。
同じく公益機関のパブリック・シチズンズ・グローバル・トレード・ウォッチは漏えいした投資に関する文書の分析を試みた。その結果、“国際評決機関”は、投資先の国内法や規則の撤廃、さらに裁判所にTTP協定に絡む外国人投資家の損害賠償請求に対し財政資金の無制約な支出を命じる権限を付与し、巨額な賠償金支払いの要求を企業に認めることが判明した。
NAFTAにおいてさえ、協定加盟国の政府は、有毒廃棄物の投棄、森林伐採規則に加え、さまざまな有毒化学物質を巡る禁止事項などで“投資権”が妨害されたとの理由で3億5千万ドル以上を企業に支払っている。
多国籍企業にとって健康、安全、環境の問題に関する規制と懸念は、明らかに投資や利益の“障害物”としてのみ受け取られている。それゆえに、彼らの“政府”は、これらの規制が賠償すべき潜在的な逸失利益となるとの理由で、企業に代わって外国の政府を訴えるのだ。
企業は、TPP協定に基づき、直接、政府を訴えることもできる。協定締結交渉参加国は、オーストラリアを除き、すべてこの“国際評決機関”の合法性を支持している。評決機関は企業の任命した、非公選で、反民主主義的な、いかさま裁判所であるが、少なくとも10カ国とその国民に対して法的権限を有することとなる。
さらに言えば、TPP交渉参加国は企業に対する医療、労働、環境に関わる基準の順守義務について同意していない。したがって、略奪し、搾取するさらなる特権を得るためのドアが企業に開かれている。企業の権利が拡大すれば、人権と民主的権利ははく奪される。

■知的所有権拡大を最重視
TPP協定が甚大な影響を及ぼす最も重要な分野のひとつが、知的所有権、あるいは著作権、特許権に関わる領域である。企業は知的所有権、もっとはっきり言えば、企業自身の知的所有権の拡大を強く主張している。
製薬企業が知的所有権の主要な提唱者であり、TPP協定の知的所有権に関する条項の主たる受益者となる可能性が高い。製薬業界は、1995年の世界貿易機関(WTO)協定に強力な特許権ルールが盛り込まれたと主張したが、結局、そのルールが不十分だったことに気づいた。
英ガーディアン紙に掲載されたディーン•ベイカーの記事によると、ジェネリック医薬品の製造業者に対し、薬の安全性と有効性を証明した他社の試験結果に基づいて市場に参入することを-大抵の場合14年間-禁じる“政府承認の独占”がより強力な特許権ルールによって確立される、という。ベイカーは「この種の規制は実際のところ、“自由貿易の原則に反する”。なぜなら、それは政府の市場への介入を促し、競争を抑制し、消費者価格を引き上げるからだ」と書いている。

■薬価高騰で弱者にしわ寄せ
基本的にこれは次のことを意味する。つまり、人々がますます人命を救う医薬品をより安い価格で入手するのを必要となっている貧困国では、多国籍企業が特許権を有する売れ行きの良い医薬品のジェネリック・ブランドをより安く製造、販売することができなくなることである。このような協定は多国籍企業に価格の独占権を付与してしまう。価格設定は彼らの意のままになる。このため、医薬品は信じられないほど高価となり、それを最も必要としている人々が入手できなくなる。
米国のヘンリー・ワクソンが的確に指摘したように、「世界の多くの地域では、ジェネリック医薬品へのアクセスが生死を分ける」。
TPP協定は過去の協定に比べ、企業の特許権を拡大させる志向が強い。ベトナムやマレーシアのような国のジェネリック薬の製造業者は窮することになる。世界に低価格な薬品を供給している米国、カナダ、オーストラリアのより規模の大きなジェネリック薬品製造業者も同様である。
米政府が薬価について医薬品製造企業と交渉する権利を放棄する一方(米国の薬価は法外に高価である)、ニュージーランドやカナダのような国でさえ消費者のための薬価引き下げ交渉に及び腰となっている。
TPP協定は政府に薬価の引き上げ決定を請願する、新たな交渉特権を企業に認可することになる。この変更に関して、米国の公益団体幹部は「この点ではブッシュ政権の方がオバマ政権よりましだった」と述べている。

■IT企業の利益重視で表現の自由を抑圧
TPP協定は「インターネットの自由」侵害も主要ターゲットとしている。
カナダで「インターネットの自由」をキャンペーンしている主要団体であるカナディアン評議会とオープンメディアは、TPP協定が音楽のダウンロードや異分野メディアの作品の組み合わせをはじめとする日常的なインターネット使用の一部を“違法”としてしまうと警告した。オープンメディアは「TPP協定はプライバシーの保護措置を講じることなく、サービスプロバイダーに市民の個人データの収集を強要し、メディア企業にメールへの罰金、ネットのコンテンツ削除、インターネットへのアクセス停止などのより大きな権限を付与することになる」と警告している。
TPP協定の知的所有権条項に依拠して、政府はインターネット使用を規制する新たな法律を制定することになる。さらにオープンメディアは「知的所有権に関する条項が暴露されたことで、一般市民のオンライン使用への重い罰金に加え、リンク先のクリックへの罰金、インターネットの遮断やサイトの閉鎖が実施される可能性があることが判明した」と警告した。
オープンメディアの創設者スティーブ•アンダーソンは「TPP協定はイノベーションと自由な表現を制限する」と警告した。TPP協定の下では、営利的な著作権侵害と非営利的なそれとの間に区別がなくなる。このため、個人使用を目的に音楽をダウンロードするユーザーは、海賊版の音楽を営利目的で販売する者と同じ処罰を科されることになる。
ソーシャルネットワークのサイトに掲載、または共有される情報次第では、インターネットユーザーは罰金を科され、コンピューターは没収、インターネットの使用は停止となり、実刑判決さえ下される恐れがある。TPP協定は著作権侵害に対して、3つの違反を犯せば、家庭でのインターネット接続が断たれることになる“3つの攻撃(ストライク)”システムを設ける計画だ。

■反発する市民を恐れ、秘密主義を貫徹
では、なぜ秘密主義を徹底しているのか?企業や政治の決定を下す人々は世論を非常に注意深く観察している。彼らは社会の多数派の意見を忖度(そんたく)しながら、大衆をいかに操作するかを知っている。一般の人々が圧倒的に協定に反対しているため、“自由貿易”協定の締結が必要な場合、協定交渉の当事者は世論を恐れて裏取引を行い、無責任な秘密主義に徹するのである。
2011年の世論調査によると、米国の人々は、過去数年間で、NAFTA型の貿易協定に対し、“はっきり反対する”から“断じて反対する”へと転じた。
2010年9月に実施されたNBC放送とウオールストリートジャーナルとの合同世論調査で次のことが判明した。つまり、階層、職業、政治信条を超えて米国人が意見一致した問題のひとつが外注の影響であった。86%が米企業の途上国への生産の外注が“米国の経済苦境の最大の原因”と答え、69%が“米国と他の国との間の自由貿易協定が米国の雇用を喪失させている”と答えた。2010年現在では、“自由貿易協定が米国に利益をもたらしている”と回答した人は17%にすぎなかったが、2007年は28%だった。
世論が“自由貿易協定”にますます強く反対するようになったため、人々が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の実態を知ることのないよう、ましてやTPPに激しく反対することのないように、秘密主義が求められるのだ。カーク米通商代表が説明したように、これが徹底した秘密主義が貫かれているまさに“実際の”理由である。

原文:2012年11月21日付OCCUPY.COM
Why So Secretive? TheTrans-PacificPartnershipasGlobal CorporateCoup
http://www.occupy.com/article/why-so-secretive-trans-pacific-partnership-global-corporate-coup

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